~結婚適齢期の女性に起きた悲劇とそれから~
最終話
今度こそ別れた。
そのはずだった。
それなのに私は、毎週末のように史作の部屋へ行っていた。
つまらない話をして、添い寝するだけ。
恋人に戻ったつもりはない。
でも完全には離れられていない。
八年という時間と、孤独への弱さが私を引き戻していた。
一人の部屋へ帰るのが嫌で、飲み歩き、酔いつぶれることもあった。
宙ぶらりんだった。
そんな時に出会ったのが慎吾だった。
離婚歴があり、子どももいる年上の男性。
最初は恋愛対象として見ていなかった。顔だって好みではなかったし、ご飯を食べに行く友達くらいでいいと思っていた。
でも、一緒にいると落ち着いた。
怖くない。
機嫌を読まなくていい。
怒らせないように言葉を選ばなくていい。
私がまた暗い方へ戻りそうになるたび、慎吾は手を離さなかった。
その安心感の中で、ようやく私は、史作と過ごした日々を冷静に振り返れるようになった。
私は史作に告げた。
「もう会わない。彼氏ができたから」
史作は「俺は別れない」と言った。
でも私たちは、もう半年前に別れていた。
私が寂しさに負けて会い続けていただけだった。
すると史作は、今度は「結婚しよう」と言った。
以前は冗談だったと言った言葉を、今になって差し出してきた。
もう遅い、とは思わなかった。
そうではない。
相手が違う。
私は慎吾と結婚すると決めていた。
史作は待つと言った。私に子どもができても育てると言った。慎吾から私を取り返すとも言った。
けれど、私の気持ちはもう動かなかった。
それ以降、史作とは会っていない。
八年という時間をなかったことにはできない。
戸籍に離婚歴はない。
それでも長い交際、同棲、結婚の約束、そして破綻を経験した私にとって、それは一つの結婚生活が終わったような喪失だった。
私たちは、それを「サイレントバツイチ」と呼んだ。
これは、過去の相手を責め続けるための物語ではない。
どれほど長く続いた関係でも、それまで費やした時間が、その先の人生まで決めるわけではない。
離れることもできる。
選び直すこともできる。
今、私は慎吾と暮らしている。

あの八年間がなければ、今の幸せには出会えなかったのかもしれない。
だからといって、あの頃に戻りたいとは思わない。
辛かったことも、悲しかったことも、決して消えるわけではない。
それでも、今の私はあの八年間さえも、自分の人生の一部として受け入れられるようになった。
そして、史作にもいつか本当に人を愛することの意味を知ってほしいと思う。
私がそうだったように、彼にもいつか心から幸せだと思える日が来ることを願っている。
戸籍には何も残っていない。
けれど、私にとってあの八年間は、一つの結婚生活が終わったような経験だった。
だから、私たちはそれを「サイレントバツイチ」と呼んだ。
長く一緒にいたからといって、その人と一生を共にしなければならないわけではない。
これまで費やした時間よりも、これから自分がどう生きたいのか。
大切なのは、きっとそこなのだと思う。
これで私の物語は終わりです。
ここまで読んでくださった皆さん、本当にありがとうございました。
もし今、私と同じように誰かとの関係に悩み、前へ進めずにいる人がいるのなら、どうか自分自身の幸せを諦めないでください。
過去を変えることはできません。
でも、これから先の人生は、自分で選ぶことができます。
この物語が、誰かにとってほんの少しでも前へ進むきっかけになれば嬉しく思います。
皆さんのこれからの人生にも、たくさんの幸せが訪れることを心から願っています。
――亜希


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